2010年1月31日日曜日

西郷南洲遺訓

万民の上に位する者、己を慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹を努め、職事に勤労して人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思ふ様ならでは、政令は行なはれ難し。
租税を薄くして民を裕にするは即ち国力を養成する也。故に国家多端にして財用の足らざるを苦しむとも、租税の定制を確守し、上を損じて下を虐げぬもの也。
会計出納は制度の由って立つ所、百般の事業皆これより生じ、経綸中の枢要なれば、慎まずばならぬ也。その大体を申さば、入るを量りて出ずるを制するの外、更に他の術数なし。
節義廉恥を失ひて、国を維持するの道決してあらず。西洋各国同然なり。上に立つ者下に臨みて利を争い義を忘るる時は、下皆これに倣ひ、人忽ち財利に趨る。
命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末に困るもの也。この仕末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬ也。

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